広報委員より        No.234 2019年11月号

今からちょうど28年前。当時としては珍しい高度生殖医療をスタートしたのは、平成3年11月のことでした。現在、高度生殖医療センターの培養室(クリーンルーム)では、8名の培養士と1名のメディカルスタッフが働いています。今月号では、当院のスタッフでもなかなか入ることのできないクリーンルームと、そのシステムについてご紹介いたします。

当院のクリーンルームは、2010年に大規模な改修増築工事を行いました。①室温と湿度を一定に保ち、②常に陽圧になっており、外部からの汚れた空気の進入を防いでいます。そして、③室内の空気は、HEPAフィルターを使用することよりクラス1000の高い清浄度を保っています。また、紫外線による影響を抑えるため、照明にはLEDを採用し、全てにおいて卵子や受精卵に優しい環境を作っています。そして、この環境を維持するため、年に2回のメンテナンスを欠かさず行っています。

  • クリーンルームに入る前には、必ず前室で手指洗浄を行い、エアシャワーを浴びます。
  • クリーンルームは2つに分かれており、手前の部屋は主に採卵の検卵作業や胚移植時に利用されています。

 

採卵室とクリーンルームの壁には小窓があります。採卵室から卵子や受精卵を操作するクリーンベンチに直結しており、そこから採取した卵胞液を受け取ります。卵胞液を顕微鏡で観察し、卵子を回収します。

卵子や受精卵は、子宮の代わりにインキュベーターの中で育てます。インキュベーターには二種類あり、当院には加湿型6台、無加湿型5台(タイムラプス2台含む)が設置されています。どちらも、温度やガス濃度、培養中の浸透圧・PHなど細かく管理し、発育環境が一定になるよう保っています。また、インキュベーターには、アラーム監視システムが設置されています。温度やガス濃度に異常が発生した場合は培養室スタッフ全員に連絡が届き、24時間体制で対応できる仕組みとなっています。

奥の部屋では、主に卵子や受精卵の凍結・融解、顕微授精などを行っています。凍結後の卵子や受精卵は、マイナス196℃の液体窒素タンクの中で保管されています。このように、当院のクリーンルームは、高度生殖医療施設としては最高水準の設備と環境を整えた上で患者様の卵子や受精卵をお預かりしています。また、フィルターの交換や、設備のメンテナンスなども、規定に沿って定期的に行っております。環境や設備に加え、技術的においても患者様が安心して治療に臨めるよう、今後とも努めてまいりたいと思います。