1.はじめに

   体外受精において、40歳未満の方が良好な受精卵(胚)を3-4回以上移植した場合、80%程度の方が妊娠されます。そのため、良好な胚を複数回移植しても妊娠しない場合を「反復着床不全」といいます。年齢により移植回数と妊娠する割合には差があり、海外からは年齢分布と着床前検査の有無で以下のようなデータが報告されています。35歳未満の方は3回目の移植、35歳~39歳が4回目の移植、40歳以上の方は6回目の移植で60%以上の方が着床します。しかし、着床前遺伝学的検査(PGT)を行うことで、40歳未満の方は1回目で60%以上、40歳以上でも2回目までの80%以上の方が妊娠されています。

この様に、背景や治療によって、妊娠までの期間を短縮でき、早く結果につながることがわかっています。最近ではこのデータをもとに、下表の下線部分までに妊娠が得られない方を着床不全と診断する考えもあります。

累積着床率2023

着床不全の原因として

①受精卵の問題
②子宮内環境の問題
③受精卵を受け入れる免疫寛容の異常
などがあります。原因に応じて治療ができる可能性があり、当院では以下の様な検査を行っています。

2.反復着床不全に対する検査

① 子宮内腔の検査

□子宮鏡検査
□子宮内フローラ検査(EMMA/ALICE)
□子宮内膜炎(CD138)検査
□着床の窓(ERA,ERPeak)

② 血液検査

□染色体検査
□血栓性素因(抗リン脂質抗体症候群、プロテインC/S欠乏症、第12因子欠乏症、ネオセルフ抗体)
□甲状腺機能検査
□免疫機能検査(Th1/Th2細胞、ビタミンD)
反復着床不全の方に、流産や死産を繰り返す反復着床不全と関与する血栓性素因や甲状腺疾患を認める方が多く、妊娠してもそのまま流産となることがあります。このため、着床不全の検査に合わせて不育症検査も併せて行うことをおすすめしています。
 また、検査の内容によって保険適応のものと自費診療のものがあります。

3.反復着床不全に対する治療法

当院では反復着床不全の方に、以下のような治療を提案しています。

① 着床前遺伝子検査
② 抗凝固療法(低用量アスピリン・ヘパリン)
③ 子宮内フローラ改善(抗生剤やサプリメント)
④ 子宮鏡手術(内膜ポリープ切除など)
⑤ レーザーアシストハッチング
⑥ ヒアルロン酸含有培養液
⑦ SEET
⑧ 子宮内膜スクラッチ
⑨ アルギニン内服
⑩ ビタミンD内服
⑪ タクロリムス療法
⑫ 移植時期の調整

これらの治療の内容によって保険適応のものと自費診療のものがあります。